IT系エンジニア業界などとは違って、ものづくり(メーカー)など製造業系エンジニアの世界では全体の年齢層がかなり高めです。
これは
- メーカーの企業年齢自体が高い
- 必要とされるエンジニアの経験量もとても多い
などが理由だと思っています。
これらに絡めつつ、この記事では
- 技術職の「年齢と昇進(役職)の関係」について
- 年代ごとのスキル差の違いはどういうイメージか
などをまとめてみます。
僕が勤める会社は日本の電機メーカーとして非常によくある体質・風土の企業なので、大手電機メーカーへの就職/転職を考えている方には良いイメージ提供ができるかと思います!

良いところと悪いところがかなりハッキリしてますよ…。
メーカーのエンジニアの平均年齢が高い理由
会社や職業の雰囲気を掴むために、働く職員の年齢イメージなどは重要なポイントだと思っています。この記事でわざわざそこに触れるのもそのため。参考にどぞ。
僕の勝手な考えなんですけど、まあイイ線ついてるとは思います。
冒頭で「メーカーのエンジニアの平均年齢が高い理由」について、2つを書きました。
- メーカーの企業年齢自体が高い
- 必要とされるエンジニアの経験量もとても多い
これらについて1つずつ思うことを書きます。
ものづくりは大器晩成型ビジネスなのでご長寿会社になりやすい
スタートアップやベンチャーは革新的なサービスや一点突破のプロダクトを軸に生まれることが多いですが、最近のトレンドは特に
- Web系のサービス提供
- モノは作るが自分は企画/立案だけ
などが主です。ましてや量産までやる零細企業など有り得ません。
理由はカンタンで、
- 莫大な投資が必要
- ビジネスが軌道に乗るまでかなり時間がかかる
という大きなネックがあるからです。どう考えても今の時代で新しく事業を始めるのに見合っていませんね。
ものづくり(いわゆるメーカー)は、この逆を考えればすぐに分かります。
- ものづくりで大きな利益を得られるようになるには時間がかかる
ということですね(投資に関しては一概には言えないので言及しません)。
「実際に目に見える"モノ"をつくる」という作業はみなさんの想像以上に大変で、企画してからお客さんに届くまでの間でものすごい時間と手間とお金がかかります。
今日本に(主に電機)メーカーとして現存している大手企業は、そういった時代を勝ち抜いて残ってきている会社が多いです。事業の醸成に時間がかかるから、生存バイアス的に残った会社の企業年齢も高くありやすいという考え方ですね。

当然といえば当然なんですけどわりと本当にこういう側面はあるのかなと思っています。
その国内大手メーカーですら、最近は量産を自分のところでやらない企業も増えてます。僕の勤める会社も例外ではありません。
ここで言っている「量産」とは生産場所のことではないです。元から工場は東南アジアや中国が主流ですが、最近は「量産設計(量産のために必要な技術的な開発/設計の工程)」すらも外注してしまう、というトレンドがあるんです。
…なので、中で活躍するベテラン層となる技術者も必然的に年齢層が上がりやすいのでは?というのがまず1つです。
ものづくり系エンジニアのスキルは「知識」より「経験」の影響が大きい
2つめの理由。どちらかというと僕はこちらの方が主力の理由だと思っています。
「エンジニア」という言葉を言ったとき、僕は勝手に
- IT系エンジニア
- ハードウェア系エンジニア
の2つがあると解釈し、文脈によってどちらかを判断します。
「ハードウェア系エンジニア」とは電気系や機械/機構系の技術者を指していて、メーカーなどものづくりでは中心となる存在ですね。
何も言わないときは基本的にはITエンジニアを指すのが時代の潮流ではありますね。
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この2つは面白くらい性質が違っていて、今回の件で最も良い差が出ているのが
- IT系エンジニア
→個人でどんどんスキルを付けられるしプロダクトも作れる、実力とセンスで上へ行ける - ハードウェア系エンジニア
→個人で身につけられる知識量なんてたかが知れてる、いかに実務で経験を積めるかにかかっている
という部分。
※もちろんあくまでも傾向を言っているだけで言い切るつもりはありません。特に現職の方からは色々な反論があろうことは分かった上での発言とご理解ください。
これは今回の件にモロに関係してきそうですよね。
だって経験量が大事ということは年齢は絶対上がるから。
さっきのスタートアップやベンチャーの例を借りるなら、若い企業者が数年にして一大事業を築けるのもこの性質の違いがあるからだと僕は思っています。起業の根幹を辿ったら「創業者が開発した◯◯プログラムがもとになっており~~」みたいのは多いですよね。
ものづくりの分野ではこれは絶対にできないと思ってます。
電子工作とかそういうレベルなら全然イケますけど、プロのエンジニアとしてメーカーで役に立つスキルを磨くなら個人てできることって本当にたかが知れている気がします。マジで何していいか分かんないから。

他のテクノロジーとは違って、それぞれ単品の知識を持っていてもそれらが実務で全く役に立たないのがハードウェア系技術者のイメージ。僕自身痛感してます。
必要は要素が千差万別で情報も世の中に出回っていない、など、色んな背景はあるにせよこれは興味深い差だなあといつも思っています。
この辺の話は下記の記事でも触れてます。興味ある方はぜひ。
だから「年齢とスキルが比例しやすい業界」とよく言われる
ここまでの話の流れを振り返れば、
メーカーにはおっさんが多いし、おっさんであるほど技術者としてのヒエラルキーも高いんだろう
ということが分かりますよね。
次の項でここについてもう少し体系的にまとめていきます。
技術職における「年齢と役職/スキル量」などの関係
ここでは年齢とスキル量を分かりやすく分類してみながらまとめてみます。
それに関連して、多くの方が気になるであろう
- 出世や昇進はどういうタイミングでどういう人がなるのか
- どれくらいの年齢層の人がどういう役職についているのか
も併せてご紹介してみます。あくまで僕の会社のパターンで、ですけど!
20代~
他業種なら20代が中心の事業も珍しくないですし、IT系企業なら平均年齢が30切るっていうのも下手したらあるかも。(経営陣入れたらないか…)
ではメーカーのエンジニアで20代はというと、うーん、カースト的にはもちろん下っ端ではあるんですけど、決して雑用などのイメージではないですね。
というかその後のエンジニア人生を左右するのは間違いなくこの時期が一番大切で、いかにこの時期に広い世界を知って色んな経験を積めるかが勝負と思っています。
僕もこの時期にいる最中ですが、色々つまみ食いしたいタチなのであっちやこっちやなんかよく分からんことになってますw

もともとずっと同じ仕事をするつもりはないのでこの状況はとても喜んでますけど!
はじめて見るものも多い世界なので普通に楽しい時代だとは思います。うん、良い職だ。
理系職は大学院を出ている人が多い関係でスタートが25歳超えてる~なんてこともよくあります。
なのでちょっと年齢に対して程度差が出やすい時期ではあるかも。
いずれにしても30直前になるとバリバリ働く中堅クラスになれるのは他の業界と変わりはありません。ただし「主役」ではない。
30代~
働き盛りと言われる世代。
それはもちろん同じで、エンジニアとしても最も脂が乗ってくるタイミングだと思います。早い人だと30代中盤くらいで
- グループリーダー
- チームリーダー
- 主任
みたいな役職に付く人もいるでしょう。管理職の意味ではないのでご注意を。
これは
- チームの役割がなんなのか
- メンバーの相性
- その人の能力
などかなり不確定要素が多いのでなんとも言えない感じではあります。「人足りないからこの人がリーダーやってんだろうな…」みたいな人はよく見かけます…。
エンジニアとしては一通り知識と経験が成熟してくるタイミングに見えます。
この辺で「リーダータイプか終始エンジニアタイプか」という僕らの世界ではよくある2タイプ診断が始まり、前者なら周りの人に好かれているのが目に見えて分かりますし、後者なら「あの人スキルあるよね」みたいに囁かれるような立場になる…みたいなイメージです。笑
早いと30代後半、というか終盤くらいから管理職(マネジメント層)になる人が現れます。
僕の会社では38か39くらいで管理職(非組合員)になれたら「あの人すげぇ!」くらいの感覚かな~。
40代~
メーカーを支えている屋台骨は40代のおっさんたち。
僕も入社したばかりのころは「なんだこのおっさんだらけの会社は…」なんて思っていたわけですが、彼らベテランエンジニアは僕の想像の斜め上を行くスーパーマンたちでした。どこからどう見てもその辺にいるおっさんなのに…。
僕の会社はやや若手少なめの傾向が強い方なので、ひょっとしたら「40代で実際に手を動かしているエンジニアなんかメーカーにはほぼいないよ」という意見もあるかもです。そこはあまり話せることがないので勘弁してください。
「ハードウェア技術者は経験量が物を言う」と記事前半でも言いましたが、その流れで行くと40代は最強の世代です。50まで行くと実際に現場に出ている人は色んな理由で少なくなるので、社内で最も業務を推進させているのはやはり彼ら、ということになります。
40代のおっさんがどれくらいすごいかのイメージには、僕はよく例えに「実戦経験豊富な兵士」を引き合いに出して説明します。
どんなに頭で分かっている知識だけあろうが、「◯◯のときはこうする!」という豊富なノウハウがないと戦場では動き回れないはず。この状況がまさに彼らベテランエンジニアの様子と似ています。
僕らじゃ答えがあるかも分からないようなことを「物は試し」と思って聞いてみるとあっさり答えが返ってきたりしていつも驚いたものです。当然そんなものはネット上のどこを探そうが得られない情報です。
こういうエンジニア、かっこいいですよね…!おっさんのくせに!!!
管理職もバンバンいらっしゃる世代なのは言うまでもありません。
最も下の管理職(係長とか課長とか?)は当然だし、部長ももちろん◯◯部長やら◯◯室長やらよく分からん上の方まで随分開きがあるでしょう。
僕の会社では45くらいが課長クラスのボリュームゾーンで、その1つ上の部長クラスは40後半~50くらい、みたいなイメージですね。
50代~
50代でなんらかの管理職についていないエンジニアの場合は次のうちほぼどちらかです。
- 専門的な技術スキルが卓越しており、マネジメントをやらせるにはもったいないような人
- マネジメント職は向いていないため現場に居続けているが、会社側も扱いに困ってしまっている人
これは分かりやすいですよね。
注意していただきたいのは、2つめは別に卑下するようなニュアンスで言っているわけではないということ。
エンジニアという理系職の強い仕事である以上、こういうタイプの方が多いのは仕方ありません。しかし往々にしてこういう場合はコミュニケーションが取りにくいようなパターンであることが多く、上司が悩んでいるようなシーンはよく見かけます。

僕が口を出すことじゃないですけど、まあ人を雇うってのは大変なんですね…。
逆に前者、技術者として最高峰を目指すパターンももちろんいらっしゃいます。
これはもう努力の範囲を超えているレベルに見えて、例えば今僕の近くにいるこのパターンの人は
- 論文も書いて学会に提出している
- しょっちゅう海外の研究機関とかに行ったりしている
- その人が開発した技術が色んなところで使われている
とかそういう世界です。どう考えてもこの人に事務仕事をやらすべきではないですよね。
「50代を超えても現場でエンジニアを続けることはできる」が、それは誰でも選択できるものではないという結論にしておきましょう。
残りは漏れなくなんらかのマネジメント業務やリーダー職をやっている、兼任していることがほとんどですね。
しかしその反面、組織が大きすぎると「管理職ばっかり多くて実際は何の仕事もしていない」みたいな隠れニートが問題になることも多いようです。古い体質であることが多いメーカー系企業はこの傾向が強い気がしてます。
別の大手メーカーに勤める友人の上司は、1日中Yahoo!ニュースを見ているらしい。それってむしろ地獄では…?
以上、年代別のエンジニアイメージでした!
まとめ:「長期安定型」のあなたにはメーカーの技術職がおすすめ
この記事を流し読みせずにいただいた方には分かると思いますが、
メーカーの技術職の特徴は一言で言うと長期安定型
なんですよね。
色々な意味で、即時性のある職業というよりはじっくりタイプ、という感じです。
これが性格に合っていると感じる方、人生設計的にしっくり来る方には間違いなくおすすめの職業でしょう。手に職もつくから仕事に困ることはないですしね。
今回は以上!
ありがとうございました。