技術職として職業選択を考えるとき、
- 研究開発職
- それ以外の開発/設計職(普通の技術系職種)
の2つがあることに気付くと思います。
「研究開発職 技術職 違い」
などでググると実際の技術者でもなさそうな人が書いたとんちんかんな記事ばかりヒットするので、僕は
というのをこの記事でお話してみたいのです。
こんなことを豪語しておいてなんですが一応釈明のために言っておきますと、僕は研究開発部に所属したこと自体はありません。
しかし
- 開発/設計職として電機メーカーで実際にエンジニアをやっている視点
- 比較的研究開発寄りな部署に長くいる(後述)
- 同期・同僚、社内での繋がりなどで感じる研究開発職への感想
などはリアルにお話できると思っています。転職や就活を考えていて実際のイメージを知りたい方は、ぜひお読みいただければ幸いです。
そもそも技術職って…
今回の話には色々前段が必要なのでちょっとだけ。
先に知っておいて欲しいのは 2つ です。
- 今回のような「製造業(メーカー)での技術職」という仕事全体のイメージ
- ①の中での「一般的な開発/設計職」が実際に何をやっているか
当然ですが、この2つさえ分かっていれば、あとは研究開発職について知るだけでおおよその違いは理解できます。
全てを省略するわけではないですが、この2つはそれぞれ関連記事を貼るに留め詳しい解説は省きます。
上記2つの記事がそれぞれの内容の解説記事になっていますので、よければぜひお読みください!
研究開発職と普通の開発職、それぞれの部署としての立ち位置
大きいメーカーが持つ技術系の部署はだいたい独自ルールによって区分けされていて、ネーミングもまちまちです。規則性はないし、なんなら組織変更でしょっちゅう変わります。いつまで経っても自分の所属名覚えられんからやめてくれ
なのですが、研究開発職だけはどこの企業も「他の部署とは別物扱い」というかなり同じようなポジションで定められています。わりと万国共通に近いです。
これがどう違うかというと、主に以下の2つの観点でその他の技術職との違いを説明できます。
- お金儲けとしての目的は弱い(ビジネスへの意識は低い)
- モノづくりをしない(量産はしない)
以下それぞれ説明してみます。

当然だけどバッチリルール決めされているわけじゃないから多くの例外がありますよ!「だいたいこうですよ」という説明だとご理解ください。
1.お金儲けとしての目的は弱い(ビジネスへの意識は低い)
「研究開発」のイメージは「研究して開発する」ではなく「研究を開発する」だと考えるといいと思います。
つまり、「何かを研究した結果自社製品を開発する!」というよりは「研究自体を頑張るぜ!」みたいなノリです。
しかしこの結果起こるのは会社の売上への貢献度の低下。他の部署とは違って会社の利益に繋がる事業とは随分離れており、すなわち「ビジネスまでの距離が遠い」ということになります。
じゃあなぜ企業は利益を生み出しにくい研究開発なんぞをやるかというと、
- 研究成果自体が売り上げにならなくとも、技術力の高さなど会社として誇示できる内容に繋がる
- 業界の発展、技術の進歩への貢献
という2つが理由としてあると思っています。
難しい研究を成功させたら、株価も上がるかも?
技術で食っている会社としては、当然技術力の高さをアピールすることが肝要です。株主から資金調達できたり、ニュースに載って知名度が上がったり、SNSで拡散されて僕らの目に入ったり…。
その研究自体が実際の製品化に繋がらなくとも、技術に対して理解を深めることの意義は大きく存在しているんです。
大きな会社ほど研究開発部が潤沢な資金を持っているのも色々うなずけますね。
業界や技術の発展、ひいては人類の進歩まで目指しちゃう?
大学の教授が自分の研究室で好きなことを研究するのと同じように、大企業の研究開発部も仕事そっちのけで好き放題やっていたりします。
「そんなことが何の役に立つの?」って言われたらたぶん誰も知らないんだと思いますが(爆)、やっぱりそこには僕ら人間にとってきっと何か意味があるんです。
軍事衛星を作ったときにまさか未来でカーナビに活かされるとは思っていなかったでしょうし、技術の進歩は人類の進歩に直結します。
ある意味「会社内の他の人たちとはちょっと違う雰囲気の場所」という感じが研究開発職の一番分かりやすいイメージですね。
実際はもっとややこしい
もちろん、こうは言いつつも実際は研究開発部で得られた成果を自社製品に応用していくケースは多いです。当たり前ですよね、せっかくなんだったらその成果も活かした方がいいに決まってますもん。
で、ここで注意して欲しいのは一般的な「技術系部署」の中にも似たようなポジションがあるということ。
多くは
- 先行開発部
- 要素技術部
- 技術開発部
のようなネーミングになっていることが多く、こちらは「飯のタネ」になるそれぞれの技術自体の開発をメインとしつつも、なるべく製品化に繋げることを目的とする部署です。
大きい会社ほどこれらの部署と共存していることが多いので、その場合は
研究開発職の人はより「研究室みたいなイメージでお金そっちのけでマジで研究してる」みたいなイメージに近い
ということでした。
最後すげぇ砕けましたがだいぶ分かりやすく理解できたのではないでしょうか?笑

ちなみに僕は入社以降ずっとこの「技術ネタの開発がメイン」の部署に所属していて、製品開発と研究開発の真ん中くらいを楽しめる良いポジションにいてます!
2.モノづくりをしない(量産はしない)
研究開発職と普通の開発/設計職の大きな違い2つめ、「実際にモノは作らないことがほとんど」という内容。
製造業の業界で「モノを作る」と言ったときは「量産すること」を指します。つまり「製品の仕様を設計して図面に起こし、新たに立ち上げた生産ラインに乗せていっぱい作るところまで!」です。
研究開発部でここまでの開発プロセスと関わることはほぼありません。
「技術自体を研究する」という特性上、彼らの成果物は無形であることが多いです。つまり「目に見える結果」がないということですね。
それが誰にどう活かされるかまでは考慮されていなかったり、はたまたされていたとしても自社内ではなかったり、とにかく出来上がった研究成果がモノづくりにそのまま繋がることが少ないんです。
これが「モノづくりまでの距離が遠い」ということ。
技術とじっくり向き合って研究を続けられるのが研究開発職の醍醐味なのは言うまでもありませんが、その代わりにモノづくりとしての側面はかなり失われると思います。
仮に社内の別プロジェクトに活かすような研究内容に携わっていたとしても、研究成果が上がった段階でその成果は製品開発専門のチームに移管されたりするのが普通です。量産設計はと言えばそのさらに先かもしれません(モノづくりは量産設計までと後とでやることも性質も大きく変わるんです)。

もしくは研究開発部だったあなたが成果と一緒に製品開発チームに一緒に飛ばされたりね…!(実際に見た)
ここまでの説明を聞くと、同じメーカーという枠組みの中にいながらにして随分とその性質が違うことがお分かりになったのではないでしょうか?
あなたのワークスタイルや性格に合わせてどちらにするか決めるべき
まとめましょう。
ここまでで明らかになったことを考えると、職業選択においては
モノづくりに興味がある!自分の手でお店に並ぶ商品を作り上げたい!!
→研究開発職ではなく普通の開発/設計職のカテゴリがおすすめ
とにかく技術と関わるのが好きだ!毎日数字と実験に埋もれてひたすら技術を追求したい!!
→研究開発職がおすすめ
ということになります。ね、シンプルでしょ?
最後おまけ情報も言っておくと、研究開発部は変わっている人がマジで多いです。これほんと。どう「変わっている」のかは伏せますが、まあそういう性質まで考慮できるとあなたのワークライフはさらに良いものになるでしょう。
※良い悪いの話はしてません!「変人」は褒め言葉でもあると僕は思ってます
ちなみに僕はというと、モノづくりをやりたくてメーカーに入ったということもあり研究開発職にはあまり興味がありません。技術と関わるのはもちろん好きだけど、いつまでもその分かりやすい成果を自分の目で見られないというのはちょっとな~って感じです!
あなたも自分の性格に合わせて適切な職種選択を行いましょーう!
おわりに
シンプルな記事でしたが、やっぱりこういう内容だけでも随分と自分の見てきたものを活かして書けるものだなと思えます。しかもその上で一般的なまとめ情報サイトなどを見ると内容の酷さにもうため息が…。
自分のブログを過大評価しているわけではなくて、正しくもない内容をさも当然のことかのように書かれているものが多くの人の目に入っているのが我慢できないんです。
「だから自分の本業に関わるところくらいは!」と思って色々記事を書いています。
ご興味いただけた方はぜひ他の記事もお読みいただければ幸いです。今回の記事が良かったという方にはハードウェア技術者のベテランおじさんは最強の記事とかがおすすめかもかも。
それでは今回はこの辺で。
いつもお読みいただきありがとうございます!