「技術職」や「エンジニア」と言うといわゆる「ITエンジニア」を指すようになって久しいですね。
「どちらが優れているか」などは一切ないとした上で、これらコンピュータソフト系のエンジニアと電気や機構などのハードウェアエンジニアの技術者とでは、その性質は全く違うという話を今回はしたいのです。
この辺の業界動向含め僕が思うことを色々書いていくがてら、メーカーにいるベテランおじさんたちがいかに最強な存在かを説明してみます。ちょっとオピニオン記事にも近いかも。たぶんみなさんには新鮮な話題なはず…。
かなり反論される可能性があると思ってますが、あくまでも僕が思っている一意見ってことで読み流してくだされば幸いです…。もちろん意義のある討論はぜひ!!
ITエンジニア(ソフト系技術者)とハードウェア技術者の違い
今回の話をするには色々前提が必要なので、まずはそこから。
「ITエンジニア」という言葉ですが、今回は彼らはコンピュータやソフトウェア系の技術者という括りにしましょう。
例えば
- SE、プログラマ(組み込み、アプリ開発なんでも含む)
- SIer
- サーバー管理、保守・運用者
という感じでしょうか。イメージ湧きますよね。
反対に「ハードウェア技術者」は、ものづくりにおいてのソフト以外の部分を担っている人を指すこととします。
- 電気(回路や基板の設計など)
- 機構(筐体の設計など)
主にこういう人たちがいます。
ハードウェア、つまり物理的に存在する有形物について開発/設計するのが彼らです。この時点で両者の性質に1つ大きな違いがありますね。「モノがあるかないか」です。
「技術職のものづくりにおいて、技術者はどういった分野に分かれているか」という話は下記記事でも詳しく説明していますので、この機会にぜひどうぞ。
以下、それぞれについて僕が考えていることをまとめてみます。
ITエンジニアは実力主義世界
ここ最近は世代や環境を問わずにプログラミングが流行ってますよね。
それは何故なのか考えたことありますか?
僕は世の中の需要(と考え方)に対応するのに最も簡単な方法だからと思ってます。
「世界にあるあらゆるサービスはプログラムでできている」と言っても過言ではないでしょう。ということは、ここには「仕事としての確かな需要」があるのはまず間違いない。
もう少し突っ込んでみると、そこには「理論的で効率的な考え方へ世の中全体がシフトしている」という流れも見えてくるのではないでしょうか。
ある1つのサービスを作るために効率的なアルゴリズムでプログラムを作成するわけですが、その仕事の発生自体も「効率化された全体のうちの一部品である」と考えるとちょっとイメージつきますか?
熱量と精神論で事業が進んでいた時代から、現実的でより実利的なビジネスモデルへと変わってきているのを僕はすごく感じます。
そこで現れた「プログラミング教育」という概念。
とても魅力的です。だって誰でも自宅にいながらパソコンひとつで始められて、そこで身に付けたスキルが世の多くの仕事に結びつくから。

僕もプログラミングの学習はとってもおすすめしてます。詳しくはこちらの記事をどうぞ。
ここに現代の縮図がすごく表れていると思いません?
「1人で始められる」というのはかなり特徴的です。しかも「パソコン(とネット)だけあれば訓練も情報収集もできちゃう」というのも美味しい。
現実的な投資をなしに、自分のまわりの環境だけで完結してスキルを磨いていけるものが主流になったということなんです。
そうなるとそこに年齢や経験の差は出にくいですよね。知っているか知らないか。やったかやらないか。
長くなってきたのでまとめます。
僕が言いたいのは、「ITエンジニアと呼ばれるようなポジションは自分ひとりの努力だけでも獲得しやすいのだ」ということ。
スタートアップやベンチャー企業をはじめ、IT系企業にやたら優秀な若手が多いのは絶対にこのためです。確信してます。
仮想通貨で一大成長した「bitFlyer」を見てください。
世界的にも新規の事業だったのでいくらかミスはあったものの、超爆益を上げているこの会社の平均年齢は30代前半くらいに見えます。もちろん(前)社長含め経営陣もめちゃ若い。
もちろん現実的な経験があるに越したことがないのは分かってます。センスだって必要なシーンもあるでしょう。
でもそれ以上に「自分一人の努力によって突き抜けられる部分が圧倒的に大きい」と思います。
競技プログラミングや独学ビジネスが流行っているのも間違いなくこの側面があるからです。
いわば個人戦に近い性質を持っていそう、という感じで一回切ります。
ハードウェア技術者は知識だけでは厳しい&ひとりでは経験を積みにくい
反対にハードウェア技術者はどうでしょう。
冒頭で紹介した
- 電気設計者
- 機構設計者
が使うような基本スキルは、例えば
- 回路図の読み方、公式の計算
- 部品の特性、基本的な使い方
- 3D CADの使い方
- 材料や接着剤に関する知識
みたいな感じになります。
じゃあこれだけ分かっていれば仕事を進められるかというと、まっっっっっったく進みません。
上記のような基礎スキルは書籍にも書いてあるし、専門学校や大学でも勉強するでしょう。下手したらネットで手に入るものもあります。
でもそれらがいつ・どう活きるのかは実際に実務をしたことがないと一切分からないのが事実でした。僕自身が一番思ったことでもあります。
そもそも何をしたらいいかも全く分からないんですよね。
逆に「プログラミングは単純」とも言えるかもしれません(優劣を言っているのではなく、あくまでも性質の差です)。
僕はもともと情報工学が専攻の人間だったので、ここの差は実感としてものすごく感じました。プログラムは文法を知っていてやりたいことが明確になっていたら実際に動くものをどんどん作れるんですけど、ハードウェア(モノ)はそうはいかなかった、と。
この辺の話は次の見出しで続けるとして、両者の違いになるような部分に着目してハードウェア技術者の特徴を挙げておきましょう。
さらっと書いてますが、実は一番言いたいことをまとめられている箇所かも。
- 自分一人で作業できない:
個人で黙々とやれる仕事があんまりない。だいたい誰かを待ったり聞いたり状況によって変わったりする - 書籍やネットで調べられないことの方が遥かに多い:
「分からないことをググる」という普段の生活スキルが全く使えない(これマジでつらい)。人に聞くのがメイン。 - 他人、もっと言うと外部の人間と関わることがとても多い:
「人に聞くのがメイン」というのはもちろん、使う部品の仕様や取り入れる技術の詳細などそもそも世に公表されていないものを多々扱うので、どうしても外の人間と関わらざるを得ない。=自分一人で仕事ができない - ITエンジニアでは「プログラミング」にあたる実際の設計も、体系化されていないノウハウなどが主体なので前もって勉強ができない:
電気なら回路・基板設計、機構ならCADがここに該当する気がするが、これらは毎度の環境や状況が違いすぎて、スキルの体系的な習得がけっこう無理。
などなど。
これらはかなり核心をつけている気がするのですが、同業者の方いましたらどう思いますか?笑
など色々反論があるかと思いますが、その辺は承知してます。僕も業務でコードは書きますし、それらを含めた上での一般的な比較をしてみたいというのがこの記事ですので、どうかご理解ください!
(最初にも言ったように優劣をつける気などは毛頭なく、実際僕はどっちも好きです)
電機メーカーなどにいるおっさんたち、実はスゴイ
実は今回の話は、僕自身が電機メーカーに入社したときの驚きについて共感してほしかったから、というのが一要素としてあります。
僕も入社したひよっこ時代は

なんでこんなおっさんばっかなわけ?時代は若手エンジニアだよ。どうせ仕事もできないクソ親父ばっかりに決まってる…。
とか思ってたわけです。
で、実際に仕事をしてみると
- 自分ひとりでの無力さ
- おっさんはただのおっさんじゃなかった
の2つに驚愕し、納得したのです。
というわけで、さっきまでは両者の比較をやってましたが今回僕が伝えたい部分はここから。
話は簡単、会社にいるベテランおじさんマジやべぇです。
もちろん人によってスキルの差はあるにせよ、少なくとも僕がお世話になったおじさんたちは皆スーパーマンでした。
僕だと答えの想像も付かないような難題に対し、「おそらくこうだろう」と長年の経験による当たりをつけ、実際に考察、実験して確かめていく。しかもそれがほぼ当たってるんですよね。
具体例を挙げろと言われると難しいんですが、「形だけのスキルや事実から分かる事柄以外の全て」って感じなんですよね。
ネットや書籍、つまり自分の足を使わずに分かるものじゃないものに詳しいって、かっこいいと思いません?実戦経験豊富というか。
実戦経験…。それだ!実戦経験!!
いわば軍隊、いや、アクション映画の特殊部隊隊員やエージェントが分かりやすいかも。
「マーシャルアーツ」や「銃の扱い方」という知識を知っている、安全圏では超訓練を積んでいる、でも実戦で死線を経験したことがなかったら兵士としては全く使い物にならないですよね。これだ。これにとても似ていると思う。
実技を積み上げた量が多いからこそ、ハードウェアエンジニアはおっさんほどスキルが高くなっていくんだと思います。
なんだろうな。応用力が凄まじいというか。
自分でも良い例えが見つかってスッキリしました。笑
また、この特徴が活きる大事な側面があることも忘れてはいけません。
それは「技術進歩についての違い」です。
IT分野は新しいものの登場がめちゃめちゃ速く、しかもその普及や流行も爆速です。そう、ネットがあるから。有形物を持たない以上、良いものはすぐに拡散されてすぐにサービスに取り入れられたりします。
で、これらトレンドを常に追って自分に取り込んでいくなんていう作業、基本的におじさん達には向いてないですよね。コンピュータやSNSに慣れ親しんだ若手だからこそマッチしているとも言えます。
反対にハードウェアの業界ではというと、進歩自体はあります。新しい電子部品が出たりみたいな。
でも基本的なアルゴリズムや設計思想などがごっそりアップデートしていくということはほぼありません。あったとしても「もの(部品)を作る」という工程を挟まなければいけないために、その普及は激遅です。そもそも広まることもあまりない気がします。
これらはおっさんたちの生活環境ともとても合っていますよね。笑
なんかこういう色んな要素があって、現代のハードウェアとソフトウェアっていうのは良いバランスになっているのかななんて思います。
でも基礎技術は新人や若手でも問題ない!スーパーおじさんを頼ろう
というわけで、「メーカーにいる技術職のおっさんは実はすげぇやつだった」という話でした。
だいぶ僕の意見が介入していたとは思いますが、それでも言わんとしていることは伝わったかな~とも思います。どうでしたか???
ところで、「技術職」という仕事が気になっている人に向けてこのブログの記事を書いている面もかなりあるので、僕が普段から言う「未経験でもマジで問題ないですよ」というのと相反しそうな感じがしてますよね、今回の内容は。
それは違います。
ここまでを見ると
「結局積み上げた実戦経験がないとまともに仕事ができないんじゃん」
というだけの話に見えますが、それは短絡的すぎです。
そもそも「仕事」というものにおいて、経験がないよりあった方が良いに越したことがないのは疑いようもない事実。しかし実力社会になってきて、プログラミングも登場し、色々な意味で煙たがられるおっさんたちがどうにもかわいそうになってきたからこんな記事を書こうと思った……、 …じゃないじゃない、何の話だこれ。
最初は誰しも新人です。そのスーパーおじさんたちでさえもです。
ならば、そのタイミングで輝く基礎スキルというのだって必ずあるに決まってます。むしろ彼らの応用力だって、この基本がなければ行使できるものではないはず。僕らがそれを学ばずしてどうするというのでしょう?
なので結論はこう。
若手のうちは基礎スキルを磨くことに精を出そう! ↓ 実戦をたくさん経験してその道のスペシャリストになろう! |
これは誇張表現ではありません。
実は僕が最初にお世話になった先輩(おじさん)が会社に何人いるかというほどの「いわゆる天才」だったので、このイメージは如実に想起できます。「歩くテクノロジー」みたいな人だったので、どこへ行っても貴重がられてました。実際今は別の会社へ行ってしまったのですが、そっちでもめちゃめちゃ頼りにされているご様子…。
「会社を利用して自らの人生をアップさせていく」というまさに素晴らしい例を見た気がしました。まさに の記事で書いていたようなことでした。
こんなに良い仕事、やっぱり僕にとっては他にないなって改めて思えました!