メーカー、特に電気製品の製造業に多いんですけど、
- 要素技術部
- 要素技術開発
- 技術開発
- 先行技術開発
だとかなんとか、こういう系の部署が必ずあります。
これらは基本的に同じものだということでひと括りにしてこの記事では「要素技術開発ってなんなの?」ということにお答えしていきます。
僕は家電系電機メーカー勤務ですが、入社以来ずっとこれ系の部署にいます。
部署の名前は死ぬほど変わったりしてるけどな!!!
テーマがシンプルなので、いつにも増して汎用的な説明にならないよう意識しながら書いていきますよ~
「要素技術開発」などの言葉の定義
まずはざっくりと言葉の定義について。
さっき挙げたような
- 要素技術部
- 要素技術開発
- 技術開発
- 先行技術開発
ですが、具体的な定義などはなく、会社が好きに意味をつけて勝手に呼んでいます。
例えば強いて言うなら
- 要素技術部、要素技術開発
→一般的。今回の記事の内容に最も近いと思われる - 技術開発
→少し意味が広くなる。「要素技術」に限らない場合もよくある - 先行技術開発
→「今はビジネスにならない先行投資」みたいな意味合いが強くなるので少し違う部署のこともある
みたいな感じです。
これら全部が同居している会社もあれば、意味は違うけどどれかしかないなど千差万別です。
ただ、これまでに僕が見てきた会社や付き合ってきた各種メーカーを見る限り、概ね上記のような分類で正しいと思います。
僕が携わってきたのは、上記で言う「要素技術系の開発」です。
言葉的にもこれが最も一般的だと思うので今回はこれを扱ってみます。
要素技術開発って実際には何をやっている?
何をやっているか実際の仕事のイメージが湧くように色々紹介してみます。概要的な説明ではないですが、実際の経験を大切にして書いているので「そういうもんなんだな~」みたいにお読みください。
大きく3つに分けて説明を進めてみます。
- 「要素技術」とは
- 他部署との関係
- 実際の開発内容例
1.「要素技術」とは
「要素技術開発」の説明とはすなわち「要素技術を開発すること」なんですが、この「要素技術」というのがイマイチ分かりにくいというのがあります。
たぶんみなさんが今イメージされているのは
「製品に役立つような部分部分ごとの開発なんでしょ?」
という感じだと思いますが、これは合っているようで違います。
ポイントは「"部品ごと"ではなく"技術ごと"に分ける」というイメージです。
分かりやすく図にするとこう。
これは各機能のキーになるコアな技術を示してみた一例です(実際は全然知らないですよ笑)。
これを例えば「部品」で分けてしまうと、
- ディスクトレイの開発
- 電源ユニットの開発
- コントローラーの開発
みたいになっちゃうわけです。これはどちらかというと「製品開発」寄りです。
大きな会社ほど実際に発売する製品の開発をゴリゴリやる部署というのは部門として大きく分かれていて、誤解を恐れず言うとこっちは「頭よりとにかく手を動かす系」です。
やることや仕様は比較的決定されていて、あとはそれに則って設計し図面を引いて出図、発注、量産へという感じです。
対して、それらの部署の人がすぐに製品開発を始められるように「キーとなる技術を提供する」のが要素技術開発です。
分かりやすくコントローラーの例で見ると、「新しい振動テクノロジー」はそれ単体で色々な技術に応用が効きます。もちろん次の世代のゲームハードを作るときにも利用できるでしょう。
ところが、さっきみたいに部品で分けてしまうと製品が変わったときの応用は効きにくいわけですね。
「ああ、このコントローラーは次のモデルではちょっと仕様が変わるからイチから作り直しだ…!」
みたいな。
これが「要素技術」の正体。
少しはイメージが伝わったでしょうか?
2.他部署との関係
他部署との関係も整理してみましょう。
さっきも言ったように、製品開発を専門とする部隊との関連は分かりやすいです。
作った技術を提供し、それが製品に搭載される。イメージ通りですね。
では他にどんな関連があるかというと、例えば「営業」や「企画」と呼ばれる部門。
いわゆる「仕事を取ってくる人たち」ですが、彼らがまず相談する技術屋は僕ら要素技術開発系の人間であることが多いです。
だってバリバリ製品開発している人たちに
「次にこういうネタあるんだけど良い技術作れそう?(^^)」
とか言ったってぶっ飛ばされるのがオチです。
なので彼らはまず手頃な奴らを探しに僕らに声をかけるんですね。
お客さんとの距離が比較的近く、他社の色んな技術を広く知れるのは要素技術系部署の良いところだと思います。これは後述しますね。
あと注意したいのは研究開発部。
やっていることや立ち位置的にはかなり似ているので、会社によっては明確な線引きを失っているケースも多いでしょう。
強いて言うならポジション的には
こういう雰囲気はあるかもしれませんが、基本的に「コアとなる技術の研究や開発」という説明的には彼らの本質は同じです。
3.実際の開発内容例
最後に僕の経験をもとに実際の開発内容例を紹介してみます。身バレ/特定は困るのでフェイクというかアレンジはありです。
機械学習アルゴリズムの開発
とあるシステムで使われる機械学習アルゴリズムの開発。
「アルゴリズム」というのはこれ単体で「汎用的な技術」みたいな側面があるので、要素系の開発の中でやられていることは結構多い気がします。
一般的にはソフトウェア分野なので
「メーカー(製造業)は関係ないのでは?」
と思われがちですが、いわゆるIT企業はこういう基礎技術検討みたいなことをビジネスにしているケースって少ないと思いますし、作ったアルゴリズムを何かしらの形にするためにやっぱりハードは必要になるので、こういうことをやっているメーカーは多いかと。
特に最近はなんでもAIが主流の時代なので、どこもこぞって似たようなことをやっています。展示会とか行くとマジでAI、AI、AI…です。
僕はこのバカみたいになんでもAIと呼ぶ風潮が本当に好きじゃなくてちょっと辟易としています…。
ディスプレイ系装置の映像表示モジュールの開発
ツッコミ待ちではないんですけど、
「それは部品で分けてるじゃん」
と言われると僕も苦笑いという感じです。笑
これは現在全く普及していないディスプレイモジュールの開発ケースだったんですよね。似たようなことをできる技術を持った他社が世界的にもほとんどいなかったので、このモジュールを持ったディスプレイそのものがコア技術みたいな評価を受けていた、という感じです。
実際にはやっぱり映像装置の一部でしかないので、使い方次第でいくらでも応用幅が効くものでした。
まさに要素技術って感じがしますね。
PC部品のコアアーキテクチャ開発
PCの中で使われる電子部品(半導体)はまさにコア技術の結晶です。
半導体事業って「ここのICの効果が2%上がった!だからこっちの回路ちょっと削減できるぞ…!!」とかそういう世界なので、本当にミクロレベルでの技術開発が盛んです。
うちはPC部品として使われるような半導体も製造・量産しているので、そのために使われるICチップ一枚とかの開発もやっていました。
これは他社供給もそのまま可能だし、逆に言うと「それだけあっても役に立ちにくいもの」なのでやはり要素技術としての側面が強いということになりますね。
おわりに:要素系の開発をおすすめしたいのはこんな人!
要素技術開発がどんなものかはだいたい説明できたので、最後におすすめしたい人を僕なりに考えてみます。
要素技術開発系の部署が持つ主な良さげな特徴は
- ゴリゴリ製品設計じゃないので時間に追われない、研究寄りな一面がある
- 関わる分野は狭くなる傾向があるが深く理解できる
などなので、じっくりと技術に向き合ってスキルアップしていきたい人に向いていると言えそうです。
僕はというと、まさにこれ。良い配属で良かったなと今はすごく思えています。
もちろん製品開発系にもメリットはたくさんありますよ。
- 「とにかく手を動かす」というのは何よりもスキルアップスピードが速い
- 製品全体を見られるので幅広い知見が手に入りやすい
みたいな!
「どっちがどっち」と優劣をつけるようなものはナンセンスですし、そもそも同じ会社なんだからお互いに協力して仕事すべきですよね。
ただし「適正」というのは必ずあるので、この記事をお読みになったみなさんは自分にはどっちのタイプが合っているか考えてみていただけると嬉しいな!と思います!
技術職全体について他の疑問がある方は のまとめ記事をぜひ読んでください。色んな他の記事にもリンクしてます。
それでは今回はこの辺で。
ありがとうございました。
非常に分かりやすかったです。参考になりました!ありがとうございます。
いえこちらこそわざわざコメントまでありがとうございます!