今日は雨ですね。
…今「なんで分かった!?」って思いました?
この記事、やっぱり雨が降ったときだけすごく読まれているみたいなんですよ。面白いですね。
では。
僕は毎日車通勤なんだけれど、「ほんの少しでも雨が降るとドカンと道が混む」のがいつも疑問でした。
そもそも「渋滞学」って、すごくデリケートというか、複雑で難しい分野だと思っていたからなんとなく調べるのを敬遠していたんだけど、ちょっとまとめてみることにしてみました。
僕が疑問に感じている部分
やっぱりまずは、そもそも渋滞ってなぜ起きているのか理解できているの?というところからですね。
ミッション・インポッシブル3で、イーサン・ハント演じるトム・クルーズが「たった1つのブレーキが大渋滞を生むんだ」という旨のことを話しているシーンがある。「交通局員という一般人を演じるシーンでの当たり障りの無い会話をさらに演じている名シーン」だと思っています。
これを見る限り、どうやら渋滞の原因はブレーキにありそうだということが推測できます。
実際、「雨が降ると道が混むのはなぜなのか」というこの記事のタイトルで検索すると上位に出てくる知恵袋では、
- 自家用車が増える
- バスの乗降客が増える
- 運転者がブレーキを踏む頻度・時間が増える
- タクシーが増える
という回答がベストアンサーになってます。
また、このサイト(リンク切れ)では「運転に慣れていないドライバーが増えるせいで渋滞になる」と説明している。つまり、「変なやつがブレーキをパカパカ踏んでいる」か「変なやつの回避とかで周りがブレーキを踏んている」ことを言っていると考えられる。
ふむふむ。
ここで僕が思うのはね、じゃあなんで雨が降るといきなり全体のブレーキ量が増えるのか?っていうことなんですよ。
そもそも体感で、雨の日でも普通に流れているときにブレーキ量の多さなんて感じたことないんだよね(「渋滞になるからブレーキを踏んでいる時間が長くなる」という再帰的なのは除く)。
でも今回自分なりに答えを出せた(?)のでちょっとお話してみますね。
渋滞ってなんだ?
まずこれに答えられる人、います?
僕は分からない。難しいよね。
でも、たぶんこの質問に答えられる人がいる。
西成活裕さんという方。
渋滞学の権威で、「渋滞学」とかいうネーミングセンスの欠片もない著書を執筆している。
東大の教授にケンカを売るのはもっての外としても、この方、めちゃすごい人です。
彼が渋滞解消の鍵を思いついたのは「アリさん」だそうで、3ヶ月インドに行ってアリの行列を観察し続けたら「アリは混んだら詰めない」という、彼らの2億年に渡る大実験の成果を発見できたらしい。
この「アリは渋滞しない」という論文を世界で最もレベルの高い物理学雑誌に投稿したら一発でパスしたとかいう天才です。興味ある方は実際の論文を貼っておくので見てみてくだされ。
追記 (2019/9/28) :たまたま、本当にたまたまネットサーフィンをしていたら「アリ」と「運転」というワード、そしてなんか見覚えのある顔が目に入った。
というわけでより詳しいインタビュー記事がつい最近ネット上にアップされていたのでご紹介。今回の話ももちろんなんだけど、その先もかなり楽しい内容!特に中間値の定理のとこで「やっぱりこの人天才だ」って思いました。おもしろいのでぜひ読んでみてください。
どうやら「詰まる」とだめらしい
さて、アリさんはなんで渋滞しないかというと、論文によるとこうある。
アリはお互いの距離に必ずゆとりを持っていて、行列ができてしまうと集団単位で餌を取る効率が悪くなってしまうことを知っているから。これは2億年もの間生きてきた中で「混んだら詰めない」ことを実践していたやつらが生き残っているからなんじゃないかと。つまり、"混んだら詰めていたやつら"は絶滅してしまった。(スーパー意訳)
人間も詰めてる場合じゃないってことですね。
ちなみにこれ、すごいきれいな「生存者バイアス」というか、アリは自分たち自身で進化していったというよりは「単に混んでも詰めない」やつらだけが生き残れた、ってことなんじゃないかと思ってます。まさに「死人に口なし」。
※ここは僕の考えです。さすがに論文全部は読んでないのでもし違ったらごめんなさい。
実際今現在の科学的な「渋滞解消法」の最良手段は適切な車間距離を保つことであるとされているようです。ただし実際には、100%全ての車がそれをやってしまうと道路の面積に対して明らかに車列が長くなってしまうのは間違いないので、「たまには詰めるやつがいてもいい」らしいけど。
車間距離が空いていると、もしひとつ前の車がブレーキを踏んでもそのブレーキのバトンは後続車に伝わらないので渋滞が生まれることはないのだ。その車間距離でそれより前の渋滞を消しているとも言える。
ここが今回のヒント!!
しかしそれと同時に感覚ではとても理解しにくく難しいところでもある。
少しでも分かりやすいイメージを持つために、以下の動画をご覧ください。さっきのアリさん観察の第一人者、西成教授たちの実験動画です。
これを見ると「車間距離を保つこと」が「渋滞を発生させないこと」とほぼ同義であることの意味がよく分かると思う。
でも、自分だけのことを考えた場合、つまり1つの車単体で到着時間を計算したらやっぱり車間距離を空けて走っていた方が結局着くのが遅くなる気がするでしょう?
実は違うんですよ。ここが一番感覚的に「渋滞」というものを理解しにくい原因だと思います。
その辺も上の動画を見ると少し分かるかと。ポイントは「長い目で見て、全体論で考える」ことです。
雨の日はたしかに詰まっている
僕が冒頭で言った疑問に対する答えは実は簡単でした。
「ブレーキが踏まれること」は単なる結果に過ぎず、「既に詰まっている」ことが問題だったからだと考えられます。
先に挙げた知恵袋で回答されているような諸々の理由も含めて、それらによって混雑したあと十分な車間距離が保たれなくなるからひどく渋滞しているように感じるということ!
「なんにも結論は出ていないし話は進展していないじゃん!」
と思われた方、たぶんそのご指摘は正しくて(笑)、これは僕の中においてこの一件の理解のプロセスを一緒に追っているものだと思ってほしいです。
この記事の今までの流れは実にシンプルで、
- なんで雨の日に渋滞するの?
- 渋滞はどうやら「ブレーキ」によって引き起こされるものらしい
- いや、そもそも渋滞っていうのは車間距離を空けないから生まれるものなんだよ
- ということは①の「渋滞」に代入すると、雨の日はみんな車間距離を空けなくなる
ということになる。だけ。
無限ループ
「じゃあなんで雨の日はみんな車間距離を空けなくなるのよ」
という無限ループになってしまうんだけど、これは以下のように考えることにしました。
「雨の日はとにかく道が混む」という固定観念がほぼすべての人にもう植え付けられている以上、「自分も遅れたくないからはやく行かなきゃ」という意志がかなり強くなります。しかしその結果前との間隔も詰まります。雨の危険を考えたらむしろ車間距離は大きくしなきゃいけないのにね。
ここは高速道路なんかの渋滞と全く同じ状態の話だけど、高速道路は
- 「その場所だけのこと」
- 「一時的なもの」
という我慢の範疇にあることや、もはや「仕方ない」という「諦め」の感情も混ざることから、あらかじめ積極的に前へ詰めようとしているわけではないのではないか、と考えました。そもそも道は広いし流れも速いからもともとの車間距離は大きいしね!
反対に雨のパターンでは、
- 「いつも走っている道なのに」
- 「通勤中なのに」
という気持ちが先行しておそらくどんどん距離を詰める。
この世界で一番はじめに雨の日に車間を詰めたやつが誰だか知らないけれど、たぶんその瞬間から負の無限スパイラルが始まっているのだと僕は結論づけました。笑
それ以外に僕の頭では理屈で説明が付けられない!
危険を予想していつもよりゆっくり走る人もいれば、そうじゃないやつも出てきたりするわけで、この差が既にブレーキを生む要因になっていること自体はここにきて僕もよく理解できました。
つまりまとめると、世界中の人々から同時に"雨の日に車間距離を詰める"という意識がなくなったら、雨が降っても道が混むことはなくなると思う。未来永劫に。
ただし注意すべき点は、雨による環境変化(知恵袋のベストアンサーのとか)も必ず存在するので、そこまで考慮するなら普段よりさらに車間距離が必要だということでしょう。
実は普段の渋滞も同じ…
でもこれ、実はおんなじことをかの大先生ミスター西成もおっしゃっていました。
渋滞には2種類あって、どうしても起きちゃう渋滞と、起きなくてもいい渋滞とあるそう。前者は単純に道に対する車のキャパシティオーバーと事故要因などによるものなんで諦めろとのことだけど、後者、つまり世で呼ぶ「渋滞」というやつは全員ががんばれば回避できるのだと。
つまり、僕がさっき赤字にしてまで出した結論はまんま普段の渋滞の件と同じカテゴリの話であって、そもそも「雨の日」に限定して考え始めていたことがお門違いだったんじゃないかとさえ今は思えてきています…。
冒頭での「自分なりに答えを出せた(?)」の 「はてな」はこの辺のもやもやに起因しています。
あとがき
まあひとことでまとめると雨に日に道が混むのは「集団的アホな行動」ってことでいいでしょうか。
この記事をお読みになったみなさんくらいは、雨の日は前との車の距離を空けてみてください。そして後ろが詰めてきたら「意味ないしむしろ逆効果なのに…」と心のなかで哀れんでみてください。
そうすればみんなハッピーに!!!(ならない)